sketch/2016.1.29【開き直る】

 雨の夜。雪の予報は解除され、明日は少し遠くに出かける。始めての場所や人と会う短い旅だ。車の調子はまずまず良さそうだが、相変わらずワイパーの動きが鈍い。スタッドレスタイヤにしたばかりなので雪道でも問題ない。


 「30歳までだよ」とか「いつまでも夢を追いかけているんじゃないよ」とかいう言葉に敗北しながら、私はせっせと世間体ばかりを気にかけて来た。ミュージシャンだという自己紹介は気が重く、この数年も、初対面の人には出来るだけ伏せるようにしていた。


 ギターを担いで歩くのが誇らしかった10代、白い目が気になり出した20代、出来るだけ隠したい30代。開き直るのもいいかもしれないと感じる、34歳と10ヶ月。