sketch/2015.12.25【ダークサイドに落ちたクリスマス】

目指すのは山の上にそびえるマンション。横浜の狭小道路を森さんのバカでかいラムバンで進む。


 都市計画が始まるよりずっと前に、我先にと住宅を構えた名残だろうか。依然としてセットバックを拒み続けているような住宅街を抜けてようやく辿り着いた今年最後の現場。重い扉を運び出し、設置する。3匹の猫が檻の中からこちらの様子をうかがっている。


 彼らの悪さを阻むための仕切扉の設置に、知ってか知らずか随分とこちらが気になる様子だ。猫らにしてみれば縄張りを狭くされてしまうとんだクリスマスプレゼントに違いないのだが、我々人間は完成した扉に大満足し、ピザを食べながら談笑している。カイ君と私、そして森さんとボスとで食卓を囲む2015年のクリスマスである。


 そして


 すべてが思考停止してしまいそうな深夜。このままではミッションコンプリートできずに意識を失ってしまうので、いつものダイナーへ繰り出す。ビールを傾けながら名刺の束を物色。私にご利益のありそうな人達をピックアップする。


 キリストの誕生日は昨日と変わらず、ブッダ寄りの板前さんと一緒である。どちらかと言えば私の方がキリスト寄りだ。キリストにもブッダにも顔向け出来そうもない心境の私は、年賀状リストの作成に忙しい。周りはワイワイ年の瀬ムードだ。


 入間から横浜、横浜から静岡、そして入間と、ぶっ飛んだ一日を終えた私の頭もぶっ飛びそうなもんだが、年賀状リストを完成させなければいけない。状況だけみると、かなりの疲労困憊だが、そんな心配をよそに頭は冴え渡り、『私にご利益をもたらす人達を選ぶ』といったダークサイドの思いは、スターウォーズの世界と同じで私に素晴らしい力をもたらしてくれた。


 世間的に気持ちの良い言い方をすれば、お世話になった方への新年のご挨拶の為に一生懸命なのである。つくづくこの世は本音と建前と世間体とで面倒だ。『それでも愛しいと思えるところに、救いがある。』と、救済のセルフサービスを決め込んで、ダークサイドの中の良心に問いかける。『アナキンも、マスクの男も、辛かったんだろうなぁ』などとほんのり思う。時間にして2秒くらいだ。


 ふと、合コンへ行っていると言う「ほっとレモンの男」にメールで茶茶を入れてみる。帰って来た返事は「ほっとレモンぶっかけますよ」だ。どうやら合コンがうまくいかなかったらしい。これからこっちへ来るというので、急いで身支度をした。その後は電話も無視する。


 明日はライブなのだ。