sketch/2015.12.1【羽根を付けた札束のゆくえ】

あるグループにプロデューサーという役割を任されている。小豆島へ渡るフェリーの中で打診を受けてからまる2年のこの日、プリプロが始まった。プロデューサーといっても幅が広いので、今の所は無料でスタジオを提供するくらいしかしていない。金の話は後だ。この時点で、職業としての自覚の無さなのか、気前が良いのかどちらとも言えないが、お互いの信頼だけは深そうだ。マイクを立てて音が始まると、札束は羽根を付けて舞い上がり、純粋に音楽の世界を羽ばたいて消えてゆく。良い音楽に触れている限り私の心は安泰だ。