sketch/2015.10.30

隣の森さんが、自作の額縁を持ってやってくる。濱田さんの撮ったguzuriの写真を入れて。忙しくなる前の穏やかなテラスで珈琲を頂く。さて、この街が観光化を目指して数年経つ。ひっそりとしているguzuriにもその波は来ている。恩恵とともに失うものも感じている。しかし、何を失っているのか、には、なかなかピントが合わせづらい。そしてピントが合う頃にはかなりの痛手を追うのだろう。しかしながら、自分のあるべき哲学は簡単に失えない。素晴らしい歌が歌えるようになりたい。それを取り巻く哲学で私は生きている。それさえ成就すれば何もいらないと思う反面、それが成就したのちの皮算用をし始める自分も共存する。結果、guzuri珈琲店が何を失い初めているのかについては議題からそれて行き、売上げがどうしたら伸びるのか、という事を真剣に考えている。

sketch/2015.10.29

カフェの店主をしていると色々ある。お客さんに帰り際、音楽を作るのに理由は必要ですか?と問われる。いきなり本丸に攻め込まれたような質問。私自身その理由についてざんざん考えたあげく、どうでもよいという気にもなっていたのだが、こう答えた。作り続けていると、そのときどきに理由が見つかります。作り始める前に理由を考える事は意味が無いと思いますよ。と。しかし、そうでもない時もあるなと、そのお客さんが帰った後に思う。そしてまたどうでもよい気分になる。そしてその類いの”どうでもよい”はきっと一生付いてまわる。今夜も閉店後のレコーディングエンジニア。

sketch/2015.10.28

深夜までの録音エンジニアを終えてから始まる自分の時間。声の響きが変わって数日経つ。明かに違う響きが始まっているので、慎重にたぐり寄せる。味を整える為の、塩を入れるのか砂糖を入れるか、胡椒なのか、蜂蜜なのか。そんな類いの案配が体の様々な筋肉に例える事ができる。バリトンの美しいシンガーへの道は深く険しい。

sketch/2015.10.27

観光バスがひっきりなしに入ってくる。およそ中国人の観光客が参拝に向かったり、戻ってきたりを繰り返している。おもての席で富士宮やきそばを食べながら、そんな景色に身を置いてみる。多磨ナンバーの私は、さながら観光客として認識されているはずで、地元のおばちゃんもそんな対応だ。小春日和が続いている。夜はもうダウンを着込み、肌寒いよりも少し暑いくらいの方がいい、などと白い息を吐き出しながら思う。つかの間の帰省。帰省というが圏央道様々で、もはや近場の感覚。120kmアベレージで夜道を2時間かからずに、東へ折り返す。母の手調理は、過去最高のクオリティーに達している。

sketch/2015.10.26

小春日和の日中、国立のギャラリーへ向かう。唇の乾き、落ち葉が風に転がる音。人々の装いも変わり始める。中央線と夕焼けはよく似合う。日の落ちる少し前の時間。家路を急ぐ駅の光景。秋の夕暮れだけが、私をこんな気分にしてくれる。今年もこの季節の中にいれる事に感謝する。見えなくなるまで手を振り、バイバーイと叫び続けるあの子が、昔の自分を見ているようで愛おしい。負けじとこちらも声を張り上げる。通りすがりの女の人がクスっと笑った。

sketch/2015.10.25

まだまだ理想通り歌えていない。それでもようやく響いてきている。これだと思うが、それも違う。掴んだと思うと離れてゆく。そんな事を繰り返す毎日。そんな訳で滞っているTIME STREAM season3の録音。というか、始まっていない録音。木枯らしの吹く中、自衛隊のジープが基地のまわりを巡回している。コンテナの中を少し片付ける。私のエアストリームのもう無いその場所は、今夜も滑走路のイルミネーションが美しい。

sketch/2015.10.24

いつの間にか10月も後半に差し掛かっている。朝も寒くなりはじめた。山積みの書類と木材。珈琲の香りとガソリンスタンドの匂い。灯油の価格が気になりはじめると、冬が足音をたててやってくる。深い秋は冬の始まり。WNCも13回目。演奏中に外で物音がする。すべてが終わり外へ出ると、最近完成したエアストリームのダイニングは私に無断で宴会場に変わっていた。カギをかけておくべきだった。

sketch/2015.10.23

昨日は不思議な日だった。あれよあれよと大人達が集まり、巨大な丸太がスルスルと転がり込んできた。昨日の何が欠けても、あの丸太は手に入らなかっただろう。すべてが予定していたかの様に時間と人が動いたのだった。夜中2時に目が覚めて眠れなくなる。ここ最近ハマっている高野秀行さんの本をまた一冊読み終え、ぼんやりと天井を見つめる。朝になり、昨日の丸太を飯能のmogatへ届ける。巨大な丸太を裂く為にヘラクレスのように斧を振りかぶる赤城さん。彼あってこそだ。これから1年くらい木を乾燥させる。オリジナルギターへの長い旅が始まった。そして、相変わらず紹興酒ばかり飲んでいる。

sketch/2015.10.22

約束の時間までは、1960年から稲荷山にあるハンバーグレストランで気持ちを整える。公園へ着くと、責任者達が丁度揃っている。モガットの赤城さんもたまたま顔みしりだったので話が早い。枯れはじめた松の伐採をしているハイドパーク。木の中心部の方はまだ使えそうだけれど、実際ギターのどこの部材にするかは未定だ。そもそも使えるのか。奇跡的な人力が集結したこの日、管理棟の近くでとても長い間この森を見つめてきた松の丸太を少し分けて頂く。

sketch/2015.10.21

朝のハイドパークは遠足の子供達と、森の方ではユンボやトラクターが忙しそうに働いている。かつて将校のハウスの車寄せだった車道の脇には、伐採された松が積まれている。急いで駆け寄る。交渉開始。午後に管理事務所に電話をかけて明日のアポイントを取った。すぐさまモガットギターの赤城さんに連絡。明日一緒に来てくれる事になる。ギターのどこかの材料にハイドパークの松を使いたい。もしかしたら実現するのではないだろうか。guzuriをオープンし、夕方には店を閉めて、そのあとは今夜も深夜までレコーディングエンジニア。

sketch/2015.10.20

Country MadeのPV撮影前にたまたま入った美容室との付き合いは、あの夏の終わりから続いている。今日のguzuri珈琲店には西荻窪からカシュカシュの保美さん一家。程よい陽射しが射すエアストリームのダイニングで久しぶりにゆっくり話をする。今日の話もどこかの未来につながっているような気がした。珈琲店をクローズし、夕方からはレコーディングハウスに変わる今日のguzuri。夜になると、そろそろストーブが必要な気配。録音が終わると、深夜スーパーも閉店の時間。買い出しを諦め、昨日買った5年物の紹興酒と富士宮やきそばで1日を締める。

sketch/2015.10.19

PCのブルーライトを一日中浴びているせいか、左目のまぶたが痙攣するので目を守るメガネが欲しい。演奏を見守る録音エンジニアをするようになって9年か。沢山の演奏を聞いてきた。これから羽ばたいてゆく音の、私はその初めてのお客だと思う。そういう尊い時間を過ごしているのだ。PCのブルーライトから目を守るメガネを買おう。

sketch/2015.10.18

その二人は、甲府から秩父を経由し3時間でguzuriに辿り着いたのだと言う。帰りは圏央道を経由して1時間と少しの旅だろう。いつものダイナーのアフロの板前さんは、休日の顔でやってきてくれた。町田からはカイ君家族。圏央道さまさまで、ご近所だ。よい天気。はしゃぐ子供達。エアストリームのダイニングで打ち合わせ。TIME STREAM×ファブリックのTシャツを作っている。

sketch/2015.10.17

朝のドライブ。携帯電話を忘れて、いつものi-Tunesではなくラジオをつける。良い音楽が流れている。シナトラのマイウェイ。番組の終わりでゴンチチの、”世界の快適音楽セレクション”だとわかる。よい番組だ。かつてRockingChairGirlが流れた事を思い、じーんとしてしまった。マイウェイと雨の朝のドライブで今日が始まる。マイウェイを歌いたい。

sketch/2015.10.16

2年くらい前。古い米軍ハウスを探しまわり、見つけては持ち主を当っていた時期がある。そんな事をMCで話した。今夜のお客様もハウスで育ったという。詳しく話していると、かつて私が訪ねたハウスのお宅のお嬢様だと判明。今も2年前と同じように物置として使っているのだと言う。WNCも12回目。いろいろ起こる。プライベートライブさながらの演奏を終えて、新しいアディアも生まれる。

sketch/2015.10.15

休んでいる気がしないので、11月に入ったら休みを一週間とって曲を書きに出かけようと思った。それは休みなのか。そろそろ海を渡りたい。強制されないということは、開放もされないという事か。放課後やアフター5が、たまには恋しい。25年物の紹興酒と四川料理の香辛料でスイッチを切る。

sketch/2015.10.14

guzuriのテラスは良い季節を迎えている。森さんと午後の一服。その後は1人で切り盛りするには十分な客足が閉店時間まで続く。先日設置したCDの試聴コーナーのおかげで、ライブでもないのにCDが売れてゆく。自分の曲を店で流す事はまず無いので、もっと早くからこうすれば良かったのだ。お買い上げ頂いたTrekTrekの2曲目のイントロのギターがどうしても聞きたいというリクエスト。躊躇しながらギターを持つが、実はちょっとうれしい。

sketch/2015.10.13

いつもとは違う飛行機の音。航空際が近いのだ。そして入間の祭りも来週。メロディーは溜まっている。言葉も毎日綴っている。電話が鳴り、出かける。ちょうどもう少ししたら、食事に出かけようとしていた。自転車で夜風を切って走る。少し厚着をした。木枯らし1号も近い。

sketch/2015.10.12

録音後の深夜、まずます冷え込んでいる。日中の暖かさにアロハシャツのヒロト君。途中、焼き芋を食べていた。季節感がめちゃくちゃでおかしい。2月から始まった録音も、もうすぐ終わる。この時期だから、寂しい気持ちに拍車がかかる。

sketch/2015.10.11

新米のウエイトレスのあどけない表情が、遠い記憶をくすぐる朝の珈琲店。秋にもすっかり慣れて、うかうかしているとあっという間に日が暮れる。今朝聴いていた嘉風くんの歌がリフレインする夜のドライブ。離れた町のスタンドで一息つく。今日はなんだろう。そういう日がたまにある。何もかもやらなければならない事ばかりなのに、何も手に付かない。明日はまた録音エンジニア。

sketch/2015.10.10

背もたれの杉は時間をかけて鞣された光沢をたたえ始めている。どんなに丁寧にヤスリをかけてもそうはならない手触り。閉店後にこのテーブルを囲むのは、もう何度目だろうか。気の張った表情が緩む時間。賄い飯を囲むSO-SOのテーブルは、guzuriからほんのわずかな距離にあったあの頃から変わらない。気がつけば雨が降り出していて、今夜も肌寒い。そして気がつけば、シンガーソングライター人生の半分以上をこの店と過ごしている。

sketch/2015.10.9

ガソリンのメモリがエンプティーラインにさしかかってからかなり走っている。久しぶりにエンストの危機感。それも国道を走っている安心感の中にある。ガソリンと、タッチパネルの誘導で飲物も購入し再びエンジンをかける。冷たいミルクティーが喉を潤す度に、これは必要ではなかった。何度もそう思った。

sketch/2015.10.8

ハイドパークのまだ朝と呼んでいい時間帯。森の中でギターを弾いていると完璧な気分になる。昨日の低気圧がまだ強い吹き返しを残し、その度に芝生を軽く叩く音がしている。どんぐりの木が風に煽られているのだ。私の腰掛けるベンチの足下にも心地よい音がした。その一粒をサウンドホールの中に放り込む。ギターを持つ度に、中でカラカラいうだろう。そしてその度に今朝の完璧な気分を思い出すのだ。それにしても、立派な松や栗の木ばかり。ハイドパークの松や栗でギターを作れないものか思案する。そのうち管理棟に足を運び、切り倒される予定の木を引き取らせて欲しいと申し出ている私が想像出来る。

sketch/2015.10.7

低気圧の影響で風が強い。薄暗い店内の2階の窓からは潮騒が聞こえる。風で梢がさえずる音、表を走る車やバイクの音が混ざると、何とも潮騒のように聞こえる。海からおよそ30キロあたりの喫茶室。フェイズの効いたエレキギターと何度も重ねたボーカルの音響効果と相まって、まるで海沿いにいる気分だ。ランチタイムをとり、今はコーヒーを飲んでいる。これからまた、20キロほど海から離れた町にゆく。低気圧の影響で風が強い。

sketch/2015.10.6

さて、今日も珈琲店。暇とたかをくくって、安全靴でエアストリームに向かうも、来客。その後夕方まで繁盛。閉店後に富士宮3人衆で西荻窪に集合。guzuriでのライブの打ち合わせもそっちのけの話題は、地元の話。やれ、あのカラオケBOXだとか、どこのバッティングセンターがつぶれただとか、富士宮の過去と現在を、おのおのの知っている情報で照らし合わせるだけ。それだけで盛り上がる時間。子供のころの心象風景が共通する、かなり限定された仲間意識のミュージシャン3人。羊毛、見田、笹倉。

sketch/2015.10.5

録音エンジニアを終えた深夜、いつものように車を走らせる。とくに当ては無い。行きつけのコーヒーショップも灯りが消えている。この頃はファミレスも深夜2時ころには閉店する。24時間営業のコンビニに立ち寄り、おでんと鍋焼きうどんというチョイスに季節の移ろいを感じる。もっと若い頃は夜が好きだった。夜が明けるのを初めて浜辺で迎えた時、夜を知った気がした。そもそもあの頃は、なんでも知っている気でいた。知らない事も当たり前のように受け入れた。私は何を知っていたのだろうか。思い出すのにも骨が折れる。

sketch/2015.10.4

この頃は、とても暇だという日が少ないguzuri珈琲店。放課後の部活のようにギターを弾き歌い始めるも、2時間くらいでギブアップ。食事をしてからドライブをして、街道沿いの珈琲店に車を停める。小沢征爾の本とニールヤングの自伝を代わる代わる読みメール仕事をして帰り道はコンビニへ寄る。チキンラーメンとチューハイは力尽きた時に摂取する為。深夜3時を回るころ、ギターも歌声も聴こえなくなった部屋で、350mlのアルコールが染みる。

sketch/2015.10.3

鎌仲ひとみ監督の「小さき声のカノン」という映画を観る。2011年4月に観た「ミツバチの羽音と地球の回転」の上映後と同じように、トークとディスカッションが行われた。情報収集に明け暮れ、デモや講演会に足を運んだあの頃、世の中は知れば知る程に、どうにもなりそうもない事で溢れていた。あれから4年以上経つ。当時危惧していた事は現実となっている。「今、福島で政治的活動をしたら、潰されます。」『潰されます』鎌仲さんの表情と声色が胸にこびりついている。夕方からguzuriをオープンし、WNC vol.11。めずらしく2時間超。

sketch/2015.10.2

首都高神奈川三号線を走っていると後ろからクラクション。森さんのラムバンだ。そのまま横浜の崖の上に建つマンションまで。室内扉新設の下見。眼下に広がるコンビナートは近々取り壊されるらしい。若い猫が3匹ウロウロしている。昨日今日と、理想的なリビングをはしご。陽射しは強いけれど、もうすっかり秋めいた雲が青空にうろこ模様を施している。うっかり首都高湾岸線に乗ってしまうが横浜方面へ引き返し第三京浜へ軌道修正。都内経由入間戻り。エアストリームで理想のリビングを思案する。

sketch/2015.10.1

狭山市民会館で保健所の講習会が終わると雲ゆきが怪しい。暗くなると雨が降り始めた。圏央道を南へ20分くらい走ると相模原。少し前までは国道16号を2時間余りかけて辿り着いた町田もご近所レベルのアクセス。赤ワインとチーズを抱え、昨年リノベーションしたというカイ君のマンションへ向かう。相模原のインターを降りてからは北里大学病院の広大な敷地が、目的地までの最短距離を寸断している。裏道を探す。細い農道は爆弾低気圧の降らせた雨でぬかるんでいて危険。結局、迂回をしただけで渋滞中の道に戻ってきてしまった。予定時刻はもうとっくに過ぎている。待ち合わせに遅れても何食わぬ顔でいてくれる、そんな人が今日も私を待っていてくれる。