sketch/2015.9.30

進めば進む程に後退して行く感覚から、すこし前進してゆくサイクルに入りかけた気がする。ボイストレーナーとのディスカッションはとても刺激的な時間。精神的なアプローチで始めた音楽を、肉体的に考えはじめてから12年くらい経つ。その答え合わせと、その先の時間は続く。井の頭通りから青梅街道を西へ。瑞穂のジョイフルまで歌いつづけると、さすがに疲れる。空腹に敗北し、数年ぶりにケンタッキーフライドチキンを食べた後は、やはり罪悪感。入間に戻り電車で再び東京へ向かう。キノ・イグルーの有坂さんは、2355の佐藤雅彦さんの短編映画をチョイスしてくれた。東の奴らと傾ける日本酒で久しぶりに酔い心地で歌を歌う。

sketch/2015.9.29

一日の終わりに車を走らせるのが、その日のクールダウンになっている。暗い夜道では人目をはばからずに車内で歌えるので、実際にクールダウンするのはドライブも終盤に入ってから。ハイオクを満タンにして夜風を切って走る。中東のどこかの国のガソリンを積んだスウェーデンの車に乗って、アメリカの音楽を聴きながら、いくつもの矛盾が浮かんでは手に負えずにいる。それでも、四川料理と紹興酒を傾ければ、心地よい眠りが訪れて、翌朝は目覚めの良さに感謝する事が出来る。

sketch/2015.9.28

ここからの眺めはいい。窓枠のアールの向こうに高い木々が枝を寄せ合って風に揺れている。煙草を吸う人の煙がすこしこちら側に漂ってくるけれど、今日は悪くない。リクオさんの「光」歌詞がふとよぎる。「ここじゃないどこかを目指す訳じゃなく 辿り着いたその場所でカーニバル そんな感じさ」

sketch/2015.9.27

今日のguzuri珈琲店。懐かしい顔と新しい話。突然の訪問やいつも通りの顔。ここ12年くらいがぎゅっと凝縮した顔ぶれで、なにかしら時代が一回りしてきているのだろうか。蝉がまだ鳴いている。ここの屋号をguzuriと名付けてから6年と少し。クランベリーも、グズベリーも、今なら上手に育てられる気がする。

sketch/2015.9.26

瑞穂のジョイフルへ閉店5分前に滑り込む。濃いレッドシダーを3本、ルーフキャリアに縛り付ける。誇らしい愛車の姿。そのままホームセンターをはしご。夜空とジェイムステイラーを聴きながら、山の方へ向かう。だだっ広い駐車場は森の匂いがしていい感じ。数分走ればカイルアの海、とはいかないけれど、まずまずの気分。guzuriのポストはコナのホームセンターで買ったけれど、瑞穂のジョイフルにも同じ物が売っていた。

sketch/2015.9.25

強い雨。こんなにも雨漏りについて考えているシンガーソングライターは今の日本では私くらいではないだろうか。わけのわからない誇らしい気持ちが押し寄せては、すぐにバカバカしくなる。近所のハンバーグレストランのカレーの味に、なんとも郷愁を誘われ、週末の夜の家族連れの団らんに囲まれると、痛々しい気持ちがこみ上げてくる。これまでの幾つかの分岐点で、私は十分向こう側に居たのだと思い、サザエさんのテーマが恋しくなる。野郎が二人、学生の様にドリンクバーを何度もおかわりする夜。

sketch/2015.9.24

弱い雨が降っている。エアストリームの雨漏りにもだいぶカタが付いてきている。はず。まだ数カ所ある浸水源を探す作業はguzuriの横に来てからはかどっている。予約のお客様、ふらりと来る人。なんとなく忙しい一日が終わる。よく行くスーパーマーケットは今夜もキャベツが売り切れ。半値のシールに、さらに半値の張ってある焼き肉と大瓶で今日を〆ル。

sketch/2015.9.23

早起きをして車を走らせる。コンビニで珈琲とあんぱんを買い、好きな音楽をかける。晴天の朝。まだ蝉の音が聴こえる。豪邸が、相続か何かで続々と駐車場や賃貸マンションに変わる。町並みはゆっくり変わっているけれど、それに気がついた時には随分変わってしまっている。人の心も、世の中の動きも、日々の変化にはほとんど気がつかない。今もその途中。そしてもう取り返しのつかない事ばかり。

sketch/2015.9.22

その人は42歳で絵本作家になったという。ある人は30を過ぎてから絵を描きはじめた。私は17歳で始めて歌を作った時は”遅い”と思った。今更ギターか、とも思った。「いくつになっても、想いがあれば何とかなる。」などとはもう思えないが、想いがなければ始まらない事は確かで、そこからすべてが動き出すのだと、1人の絵本作家の展覧会で感じた。ここ最近の私の一番好きな季節がやってきた。秋だ。

sketch/2015.9.21

下北沢の坂の下で、leteのしんたろうさんにばったり。少し立ち話をして別れた。目当てのアクトは入場規制、ごった返すカフェにも席を見つけられず、しばらく下北沢を彷徨う。裏通りを抜けるとleteの灯りが飛び込んできたので、その扉を開けた。さっきの立ち話とカウンター越しの数分間で、ここ数年の出来事はだいたい総括された。2008年から4年間、毎月leteでライブをしていた。豪雨に”ゲリラ”という冠が付いたか付かないかの夏から、しんたろうさんとleteは特別な場所。ライブ前に良い時間が過ごせた。そのままの気持ちで夜のステージへ向かった。

sketch/2015.9.20

シルバーウィークという聞き慣れない連休に入ったらしい。ひっそりと佇むguzuri珈琲店にも客足が絶えない一日。珈琲と食事を絶え間なく作り続けていると、昔働いていたカフェのことを思い出す。バラの時期が来ると人通りの増す商店街の珈琲店で過ごした時代から、もうすぐ干支が一回りする。秋が深まれば、今年も薔薇の季節。

sketch/2015.9.19

早朝から力仕事を手伝いに出かけ、そのあと店を開ける。夕方から西武線に乗って日比谷まで。西武線からの丸ノ内線は驚く程アクセスが良い。開演時間を1時間間違えたが、2曲目から滑り込んだ。細野さんがMCで68だと言った。ジェイムステイラーと同い年だと知る。ついでにジェイムスと私は魚座で3日違いの誕生日だと判明。これは相当嬉しい。今月は9/1にジェイムステイラー、9/19には細野晴臣という、スペシャルマンス。私も歌い続けよう。しんみり思う。

sketch/2015.9.18

ふと、言葉とメロディーが足並みを揃えてやって来てくれる。私にとって最も目の当たりの奇跡が、日々のデコボコしたものをフラットにしてくれている。こうしてまた、それを奇跡だなどと思えていることが嬉しい。

sketch/2015.9.17

土砂降り。夕方、雨脚は弱まる。guzuriに集まる不思議は今に始まった事ではないが、改めて思う。人を繋ぐ場所の持つ意味のような事を考えざるをえない。どちらかと言えば、場所を持つよりも、風来坊の方が性に合っているとはつくづく思うが、持ってしまったものはしょうがない。帰ってゆくカイ君の背中を見送り、森さんと濱田さんとで、乾杯。世界は広くて、そしてとてもこじんまりとしている。

sketch/2015.9.16

新たな兆しが見えている。人の伸びしろは一生続くと思っている。珈琲店とエアストリームを行き来きしながらインパクトドライバーを片手に、そんな事を考えながら体の各部位と会話をしている。

sketch/2015.9.15

エンジニアをしていて思う。ミュージシャンに対してミュージシャンの見地でアドバイスができる録音技師になる為には、もう少し私自身が納得出来るプレイが出来るようになる事だな、とは思いつつ。思いつつも、つい口を挟んでしまう。そして私自身を振り返る。

sketch/2015.9.14

guzuriの営業をなるべくしようと思うこの頃。その矢先、ライブにも足を運んでくれるご夫婦が来店。ご主人の誕生日だと言うので、帰り際に2曲歌わせてもらう。喜んでもらえたことに、私は思いのほか嬉しく、sing a song 0円というメニューも悪くはないと検討に入っている。 本当にうれしかったのだ。

sketch/2015.9.13

ハワイ島でガット弦仕様のテナーギターを買って、ヒロのホテルで作った曲がある。入間に帰ると、近所のフラガール兼ロミロミセラピスト兼占い師がフリを付けた。海が恋しいと、海の無い場所を嘆く歌「イルマハロ」。久しぶりに入った店で、久しぶりのフラを見て、久しぶりにその曲を歌う夜。ヒロの小さな部屋の景色をうすら思い出す。マハロな夜。

sketch/2015.9.12

guzuriの営業を終えて、買い出しをする。どうみてもジャンクなピザを購入。夜もふけてガレージランドのエアストリーム移動の手伝い。大きなトレーラーが移動する様はいつ見ても壮快。夜な夜なカレーを仕込みながら晩酌が始まる。

sketch/2015.9.11

guzuri珈琲店時々エアストリームの位置の微調整、そして雨漏り修繕など。気がつくと24時。そして深夜のドライブ。ボイスメモやCDを流しながら走る至福の時間。愛車はさながら移動スタジオ。

sketch/2015.9.10

朝のドライブ。永福までの慣れた道のり。モスバーガーで野菜ジュースを買おうとドライブスルーに入る。しかし、モスチキンとチリドックと珈琲をチョイス。夕方の渋滞前にはguzuriへ戻る。マスタリングの手直しや、明日からの営業の買い出し。そして近所のダイナーへ。うまい物を見ると菊正宗が欲しくなる状態で、みるみる酒が入り、数日前の誓いも忘れそうになるが、忘れないでセーブ。今夜は森さんとチョークボーイと乾杯。

sketch/2015.9.9

nabanaのマスタリングを終えると晴天と厚い雲がせめぎ合う怪しい空模様。高知の歩屋と田中君の来ているアルマカンへ向かう。吉祥寺の雨雲レーダーは丁度真っ赤な時間帯。高知とは少しずつ縁を深めている。今年は高知が不足しているので、そろそろ戻りカツオのようにあの土地へ向かわなければと思う。

sketch/2015.9.8

雨の一日。台風が近づいている。二つも近づいている。数年前まではこのくらい降れば、富士見公園にはみるみる水が溜まった。そして富士見湖と名付けた大きな水たまりで、guzuriはまるで湖畔に佇む家だった。雨上がりにはその景観に心底感激していた。今はもう無い景色。そして、所変われば雨漏るところも変わる、我が愛しのエアストリーム。

sketch/2015.9.7

0時を回っても車通りはまずまずある。霧雨は少しずつまとまった雨に変わりはじめている。牽引のアストロ含め全長15mの大移動。アリゾナの砂漠から狭山、そしてguzuriまで1年半の旅。得た物も、失った物も、全部詰め込んだ銀色の流線型。深夜2時。近づいている台風の影響で本降りに変わるさなか、ご近所さんにご迷惑をおかけしながら、エアストリームが無事に到着。

sketch/2015.9.6

フィッシュマンズのフィナーレに舞台袖で揺れていた。それからは、断片的な記憶。新幹線の中で、これまで感じた事の無い寒気と全身からの冷や汗で体感温度は急降下。そして床に着いたまま20時間以上、寝つづける。酒はほどほどにしようと誓うのは今年3度目のこと。

sketch/2015.9.5

雲から陽射しが覗くと痛いくらいの暑さ。海の方を歩くと涼しい風がふいていた。ここは昔のお台場のような場所なのだろうか。開発が進めば、この埋立地であろう野原にもオフォスビルなんかが建つのだろうかと、ふと思う。バックステージから飲食屋台の裏へ出ると工事現場のような景色に変わる。トンボがたくさん飛んでいる空の奥行きに、秋を感じる。

sketch/2015.9.4

リハーサルを終えてから、一度会場を出た。第二京浜から環七へ入り、大森駅前を過ぎて、池上通りへ。再び環七、第二京浜と30分程ドライブをした。ところどころで蝉の音とクラクションの騒音。いつか入った事のある寿司屋や一度だけ乗った事のあるはずの電車。立ち上る入道雲に夏の続きを感じていた。いつもの中華料理屋で一日を終えると、急に眠くなった。

sketch/2015.9.3

高速道路を走る。車を走らせて音楽を聴くといい。メロディーを彩る景色に涙がこぼれると、少しほっとする。とにかく私は、今の自分には出来ない事をやろうとしているので、常に発見と落胆を繰り返している。行き詰まった時は車に乗って音楽を聴きながら、あの町を目指す事にしている。

sketch/2015.9.2

忠さんの歌声と克彦さんのギター、杏ちゃんのコーラスが響くguzuri珈琲店。たまたま居合わせたお客さんは、たまたま忠さんの大ファン。夏にぶり返したようで、そうでない陽射しと風の一日。夕方はカイ君と話し込む。久しぶりの営業日は賑やかな顔ぶれ。

sketch/2015.9.1

朝から曇り空の松本。突然の夕立に小走りで喫茶店へ入る。向いのホテルからはコンサートへ向かうタクシーがひっきりなしに出入りしている。バックに忍ばせた新譜のアナログ盤と最近ライブで着ているカイ君のジャケットで準備万端。舞い上がり彼の名を叫びたかったが、小沢征爾さんへのバースデーなのでグっとこらえたのは私だけではないはず。ありがとうジェイムス。

sketch/2015.8.31

小諸の町を見下ろしながら湯につかっていると、雲行きを語りかけてくる声。のぼせては、湯脇に腰掛けてを2度くらい繰り返す間、いろいろな話をした。赤の他人だと思っていたその声の人は、父の恩人だった。松本にJTを観に行く道すがら、人生の中で最も不思議で運命的な出会いをする。