sketch/2015.10.10

背もたれの杉は時間をかけて鞣された光沢をたたえ始めている。どんなに丁寧にヤスリをかけてもそうはならない手触り。閉店後にこのテーブルを囲むのは、もう何度目だろうか。気の張った表情が緩む時間。賄い飯を囲むSO-SOのテーブルは、guzuriからほんのわずかな距離にあったあの頃から変わらない。気がつけば雨が降り出していて、今夜も肌寒い。そして気がつけば、シンガーソングライター人生の半分以上をこの店と過ごしている。

sketch/2015.10.9

ガソリンのメモリがエンプティーラインにさしかかってからかなり走っている。久しぶりにエンストの危機感。それも国道を走っている安心感の中にある。ガソリンと、タッチパネルの誘導で飲物も購入し再びエンジンをかける。冷たいミルクティーが喉を潤す度に、これは必要ではなかった。何度もそう思った。

sketch/2015.10.8

ハイドパークのまだ朝と呼んでいい時間帯。森の中でギターを弾いていると完璧な気分になる。昨日の低気圧がまだ強い吹き返しを残し、その度に芝生を軽く叩く音がしている。どんぐりの木が風に煽られているのだ。私の腰掛けるベンチの足下にも心地よい音がした。その一粒をサウンドホールの中に放り込む。ギターを持つ度に、中でカラカラいうだろう。そしてその度に今朝の完璧な気分を思い出すのだ。それにしても、立派な松や栗の木ばかり。ハイドパークの松や栗でギターを作れないものか思案する。そのうち管理棟に足を運び、切り倒される予定の木を引き取らせて欲しいと申し出ている私が想像出来る。

sketch/2015.10.7

低気圧の影響で風が強い。薄暗い店内の2階の窓からは潮騒が聞こえる。風で梢がさえずる音、表を走る車やバイクの音が混ざると、何とも潮騒のように聞こえる。海からおよそ30キロあたりの喫茶室。フェイズの効いたエレキギターと何度も重ねたボーカルの音響効果と相まって、まるで海沿いにいる気分だ。ランチタイムをとり、今はコーヒーを飲んでいる。これからまた、20キロほど海から離れた町にゆく。低気圧の影響で風が強い。

sketch/2015.10.6

さて、今日も珈琲店。暇とたかをくくって、安全靴でエアストリームに向かうも、来客。その後夕方まで繁盛。閉店後に富士宮3人衆で西荻窪に集合。guzuriでのライブの打ち合わせもそっちのけの話題は、地元の話。やれ、あのカラオケBOXだとか、どこのバッティングセンターがつぶれただとか、富士宮の過去と現在を、おのおのの知っている情報で照らし合わせるだけ。それだけで盛り上がる時間。子供のころの心象風景が共通する、かなり限定された仲間意識のミュージシャン3人。羊毛、見田、笹倉。

sketch/2015.10.5

録音エンジニアを終えた深夜、いつものように車を走らせる。とくに当ては無い。行きつけのコーヒーショップも灯りが消えている。この頃はファミレスも深夜2時ころには閉店する。24時間営業のコンビニに立ち寄り、おでんと鍋焼きうどんというチョイスに季節の移ろいを感じる。もっと若い頃は夜が好きだった。夜が明けるのを初めて浜辺で迎えた時、夜を知った気がした。そもそもあの頃は、なんでも知っている気でいた。知らない事も当たり前のように受け入れた。私は何を知っていたのだろうか。思い出すのにも骨が折れる。

sketch/2015.10.4

この頃は、とても暇だという日が少ないguzuri珈琲店。放課後の部活のようにギターを弾き歌い始めるも、2時間くらいでギブアップ。食事をしてからドライブをして、街道沿いの珈琲店に車を停める。小沢征爾の本とニールヤングの自伝を代わる代わる読みメール仕事をして帰り道はコンビニへ寄る。チキンラーメンとチューハイは力尽きた時に摂取する為。深夜3時を回るころ、ギターも歌声も聴こえなくなった部屋で、350mlのアルコールが染みる。

sketch/2015.10.3

鎌仲ひとみ監督の「小さき声のカノン」という映画を観る。2011年4月に観た「ミツバチの羽音と地球の回転」の上映後と同じように、トークとディスカッションが行われた。情報収集に明け暮れ、デモや講演会に足を運んだあの頃、世の中は知れば知る程に、どうにもなりそうもない事で溢れていた。あれから4年以上経つ。当時危惧していた事は現実となっている。「今、福島で政治的活動をしたら、潰されます。」『潰されます』鎌仲さんの表情と声色が胸にこびりついている。夕方からguzuriをオープンし、WNC vol.11。めずらしく2時間超。

sketch/2015.10.2

首都高神奈川三号線を走っていると後ろからクラクション。森さんのラムバンだ。そのまま横浜の崖の上に建つマンションまで。室内扉新設の下見。眼下に広がるコンビナートは近々取り壊されるらしい。若い猫が3匹ウロウロしている。昨日今日と、理想的なリビングをはしご。陽射しは強いけれど、もうすっかり秋めいた雲が青空にうろこ模様を施している。うっかり首都高湾岸線に乗ってしまうが横浜方面へ引き返し第三京浜へ軌道修正。都内経由入間戻り。エアストリームで理想のリビングを思案する。

sketch/2015.10.1

狭山市民会館で保健所の講習会が終わると雲ゆきが怪しい。暗くなると雨が降り始めた。圏央道を南へ20分くらい走ると相模原。少し前までは国道16号を2時間余りかけて辿り着いた町田もご近所レベルのアクセス。赤ワインとチーズを抱え、昨年リノベーションしたというカイ君のマンションへ向かう。相模原のインターを降りてからは北里大学病院の広大な敷地が、目的地までの最短距離を寸断している。裏道を探す。細い農道は爆弾低気圧の降らせた雨でぬかるんでいて危険。結局、迂回をしただけで渋滞中の道に戻ってきてしまった。予定時刻はもうとっくに過ぎている。待ち合わせに遅れても何食わぬ顔でいてくれる、そんな人が今日も私を待っていてくれる。