sketch/2014.1.11

入間のハウスに引っ越して、丸7年たった。ヴィムベンダースのフィルムのギャラが引っ越しのたしになったので、今の生活はちょっとヴィムのお陰さまです。毎年正月になると思い出す。単発でのあんな高額ギャラはそれ以降もらっていない。


先日逝ってしまった藤井さんとの出会いもこのハウスの玄関先。今とは全く景色が違うけど。僕は寝坊してずいぶん外で待たせてしまったけど、外でニコニコしていた。去年の伝承ホールの朝も寝坊してしまったけど、やっぱりニコニコしていた。一度、あるセッションの後、ちょっと口論になった。でも最後はニコニコしていた。そのうち一緒にロンドンかハワイのスタジオで録音しようという話をよくしていて、僕はとても楽しみにしてた。震災後はすぐに福島に駆けつけ、原発のボランティアしたり、線量多すぎて一度千葉の施設に入ったとも言っていた。無茶な人だった。足をけがしてもびっこひいて、病院にも行かないし、冬でも半袖とフリースだけだし、携帯持っていないし、髪も切らない。猫が好きで、嘘がきらいで、カフェオレの甘めが好きで、夜も全然寝ないし、すげーしゃべるし、のり平の武蔵野うどんが好きで、餅天が好きで、自分の中にちゃんと法律がある人。最後に会ったのもguzuriだった。僕はその日イノトモさんのレコ発の為作業中の藤井さんを残して出かけた。始めての出会いは僕が出迎えて(寝坊したけど)、最後の時は僕が送り出された。最初も最後もこの場所。猫が多くて、緑にかこまれたこのスタジオを一緒に作ってきたと思っている。僕がだまって壁を壊したときブースがひとつ減ってちょっと困ってたけど、結局ニコニコしていた。今も公園の方からノックして現れそうな気がする。マイクのいっぱい入った重たいキャリーを弾いて、熊のぬいぐるみと一緒に。


去年の伝承ホールの終演後、搬出用のエレベーターホールで「これからもっとこういうコンサートやっていくんやからね。」って言われたことを思い出す。藤井さんのマイクの前では嘘がつけない。素っ裸なものだけがそこに残る。素っ裸なものに自身が持ちたくて、藤井さんをエンジニアに選んだ。このスタジオで一緒に過ごした時間が、これからの糧になると信じている。


つらつら書いた。今日は添削しないでそのままリリース。おやすみ。