sketch/2014.1.7

髪をほどいた 君の仕草が 
泣いているようで 胸が騒ぐよ 
大瀧詠一/幸せな結末 より
 
高校生の頃、唯一カラオケで上手に歌えた曲です。J-POPを歌うと声が裏返ってしまって、友人からはよくバカにされていました。ところが大瀧さんを歌うとそんな友達も感心してくれた覚えがあります。もちろんシングルも買いました。それがはっぴいえんどに出会う3年くらい前。まだギターも手にするかしないかの頃でした。
はっぴいえんどを始めて聴いて、その人が大瀧詠一だとわかった時の、納得感はいまでも覚えています。それから20代のほとんどは、大瀧さんと自分との間に、理想の声を探し続けていました。当時のノートには声の管理の為に、タバコの本数とその日の喉の具合や、鼻腔の使い方など、こと細かく書いてあり、今見ても忘れていた発見があります。今でこそ歌唱の表現は変化しましたが、歌の基礎の部分は当時していた大瀧歌唱法の研究が大きな礎となっています。
今思えば、歌唱についての考察と実験をする切っ掛けを大瀧さんには頂きました。当時の考察は主に、鼻腔や日本語の発生について。その後様々な試みをした結果、現在は体の体幹から声を発するまでの各筋肉の連動性に着目しています。そのステージに入ってかれこれ2年程たちますが、およそ10年間の研究が具体的に表現として実を結びはじめている実感があります。そして幸せな事にそれにより理想の歌声がまたこれから先に生まれてきました。
すべては歌いたい歌を歌う為に、僕の生活の中でその事を忘れた日はここ10年くらいで一日もないのではないでしょうか。それと高校3年間の皆勤賞だけは思い返すと自分でも感心します。ここまで来たら、いつか一冊の本が出来るくらいの気持ちで、自分を実験台にこれからも歌っていきます。
そして、突き詰めれば突き詰めるほどに、そんな事はどうでも良くなるくらい、歌が好きになって行くのです。
2013年12月30日の夜、立夫さんがドラムで参加した楽曲のセレクションを聴いていました。久しぶりに聴く大瀧さんの声に、やっぱり惚れ惚れし、また新しい発見を幾つもしながら、何度も繰り返し聴きました。
改めて、僕はこの人の歌を聴いたから、歌をこんなに追い求めて、そして好きになれたんだな、と思うのです。
 大瀧さん、安らかに。
 
大瀧さんの曲、今度のライブでやってみようかな。明日のリハーサルでバンドメンバーに相談してみよう。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
2013年1月7日 笹倉慎介